とある営業マンの裏話 -6ページ目

初契約

僕の初交渉は意外なほど早くやってきた。
まぁ契約というか申し込みだけど。

入社して、3日目のことでした。
でも実はずるしていることをいまだに同期には言ってません。

とりあえず、新入社員は全員で、研修もかねて松戸の物件の
飛び込み営業から開始しました。

僕はこの研修期間になんとしても結果を出そうと思っていました。
1日目2日目は、やみくもに飛びこんでいたのですが、飛び込みを
やっているうちに、「前に見に行ったことあるよ。」といわれ
たまたま過去来場したことがある人に飛び込んでしまい、僕が
新入社員ということもあってけっこう話しを聞いてくれました。

そこで思いついたのが、以前来場した人に飛び込んだ方が、もしかして
話しを聞いてくれるんではないだろうか、ということです。

そして3日目には、過去来場者リストから年収の高い人をピックアップ
して飛び込みました。
もちろん、みんなには内緒で。

そしたら案の定、じっくり考えていた人に当たりました。
その日にもう営業攻勢です。

「新入社員なんです。本当お願いします。モデルルームもう1回見て下さい。」

今考えると、本当に恥かしい営業です。
お客さんにお願いしますって言ったのはこれが最初で最後でした。

無事、そのままモデルルームに来てくれて、先輩に商談してもらい
申し込みをもらいました。

入社3日目で申し込みをもらったのは、最短記録更新でした。
当然軽く全社で話題になり、社内報にも掲載されいいスタートを切ることができました。

ずるしてましたけどね。。。

フルコミッションな人たち

不動産の営業マンにも完全歩合給(フルコミッション)な人たちがいる。

ちなみに僕はずっと年俸制だったので、何件契約をとっても変わりません、次の年に若干影響する程度でした。

僕は何回か完全歩合給の人たちと一緒に働いたことがある。他社のマンションを販売代理で売っていたときに、その売主の契約社員たちが一緒に販売事務所に入って、交代で客の交渉を行っていた。(大企業でよくあるパターン、住友不動産とか。。。)

その人たちの給与形態は以下のような感じだ。

契約終了・・・販売金額の0.5%
引渡終了・・・販売金額の0.5%   計1%のコミッション

つまり、4000万円の物件を売ったら、総額40万円もらえるという計算ですね。引渡しが長い物件の場合は、その月にもらえる金額は20万円となります。

まぁ1本契約出せば生活はなんとかできる感じですよね。

僕はこの人達をなめていて、ひどい目にあったたことがあります。

マンションを販売するときは、土日は客が来るのでモデルルームに待機することが多いのですが、その人たちはみんな飛び込みに出かけていきます。

売り出し当初の土日なのにおかしいなぁと思ってはいました。

すると、飛び込みでめちゃめちゃ連れてくるのです。しかも普通の来場者は全然来ない。いくら彼らが必死にやってるとはいえ、これはおかしいと思っていました。

2日目も同じような感じだったので、僕はその人たちの後を探偵のごとくつけました。

すると面白い光景が。。

飛び込みしにいくと出て行ったのに、モデルルームのそばで隠れていました。
そして普通にモデルルームに来場したお客さんに声をかけて、一緒に入り、飛び込みで連れてきたことにしていたのです。

生活がかかっているので、ルールなどはあってないようなもの。1件の契約に対する執着心が全然ちがいました。

そういった意味では、相当勉強させてもらいました。
商談のスキルは全然でしたが。。。



逮捕!?

僕は職務中に警察に捕まったことがある。
忘れもしない日本橋の物件を販売していたときだ。

売るために好きなことをなんでもやっていいぞ。と言われていたので、僕は自分の名前を記載してある看板チラシを100枚ほど作り、電柱にばしばし貼っていました。

その日は雪が降っていて、永代橋でトラックが横転していました。僕は大変だなぁと思いつつ気にせずチラシを貼り続けていました。

当然警察も駆けつけていたのですが、そのそばで気にせずチラシを貼っていた僕は警察に呼び止められ、パトカーに乗せられました。

「ぜんぜん意味がわからん。」と動揺を隠しきれない僕に、警官がパトカーの中で電柱にチラシを貼るのは軽犯罪ということを説明してくれました。

そして日本橋警察署で4時間拘束され、チラシを作った時間や、チラシの構成を考えた経緯などこと細かく書類に縦書きで書かれました。(今でもなぜか縦書き)

最後に最新の機器で指紋を取られ、上司に迎えに来てもらい釈放です。

上司には怒られると思い、覚悟していたのですが、上司は笑っていました。

「まぁつかまったけど、仕事をちゃんとしている証拠にはなったな。」と。

でも次の日東京支社長によばれ、ごっつ怒られたのでした。。。




社長の話し3

昨日に続いて、また社長の話し。

社長が独立したばかりのこと。
当時不動産会社として独立はしたものの、
売るものがなくて困ったらしい。

最初のうちは、マンションデベロッパーに販売代理の受託を
受けるための営業をしにいくのだが、若干26歳の社長の会社に
そう簡単に任せてくれる会社はない。

売上を立てないと給料が払えないので、どうしたか。

なんとパン屋を始めました。

パン屋を始めた理由は、パンは夜仕込んで朝いちで売りに出すので、
昼間の営業活動に影響を及ぼさないからです。

驚きは、途中でヤクルトのおばさんと契約して、
ヤクルトのおばさんに売ってもらうようになって急激に売上が伸びたということです。

ヤクルトのおばさんは、あらゆる会社に入り込めるネットワークを
すでに持っているので、コミッションを渡してパンも一緒に売ってもらい、おばちゃんに
とっても社長にとっても効率のいいものだったそうです。

会社が設立3ヶ月くらいで軌道に乗ったため、そのパン屋は当時
工場長だった人に譲ったそうですが、今でもけっこうもうかってる
パン屋だそうです。

社長2

社長の話しの続き。

この社長の生き様を書いた本がある。
社長の自筆じゃなくてほかの人が書いた本ですが。

そこで、気になることが一つあった。
社長が初めて受注した案件がある。
3ヶ月で1戸も売れていない17戸のワンルームマンションの
販売受託だ。
委託先も当時どこの骨ともわからない会社にお願いするには、こんな案件しかなかったのだろう。

その本いわく、その腐った案件を1週間で完売させたと書いてあった。
そして、好評価を得て、200戸の大型販売受託をGETして軌道に乗ったらしい。

俺は入社してから社長と2回しか話したことないが、
その時に話した会話が以下の通りだ。

  「社長、本読ませていただきました。1週間で完売ってすばらしいですね。」
社長 「お前、何言ってんだよ。あんな物件1週間で完売できるわけないだろ。」
  「え?」
社長 「クライアントには架空の契約書を渡して完売したことにしたんだよ。」
  「え、でもそれってやばいんじゃ。。。」
社長 「その後に大型物件を売り出す情報を入手してたから、その案件を受託したかったんだよ。」
  「でもばれるとまずいのではないでしょうか。」
社長 「そんなの放置しておくわけないだろ。完成まで1年あったからそれまでに売り切ったよ。」
  「なるほど!」


と、こんな感じです。
当時、社長の自己資産は300億。今は500億弱。
やっぱり成功している人は激しいことをやっています。

社長

僕は会社を辞めた今でも、前職場の社長は本当に尊敬している。
この社長について、しばらく書いていこうかと思う。

社長はもともと、大手マンションデベロッパーに3年勤務。3年で全国トップ営業マンになり、当時最年少課長になる。そこから同期の仲間達と独立。まぁ一緒に独立したというよりは、社長という人間についていけば、安泰という思いがあったんだろうと思う。

当時バブルがはじけたばかりで、不動産業界での独立は自殺行為に近かった。

しかしそんな状況下の中、会社設立6年で店頭公開(当時史上最速、後に光通信に記録更新される。)、12年で一部上場という輝かしい実績を残して来た。

今は、ネットという新しい業態により上場までのスピードが速くなっているが、当時上記のスピードは本当にセンセーショナルだったらしい。

この成長の要因をまた書いていきたいと思う。

営業で大事なこと

私は新卒の時の顧客ノートというのをいまだ大事に持っている。ふと昨日そのノートを開いたときに、以下の項目が書かれたシートがノートの後ろに貼られていた。

当時、上司だった人が無理やり貼ったものだ。僕に対する期待と、まだ甘いんだよという両方の意味のこもった言葉なだけに今でも読み返すと大切なことを思い出す。

やっぱり自分は心から営業が好きなんだなと思う。


・プラス思考と健康体
・素直さと負けず嫌い
・はてしない向上心
・目標設定とライバルを作れ
・お客様の心を動かす情熱
・本音を見抜け
・感じよくずうずうしく
・先入観を捨てろ
・買っていただければお客様は幸せになると信じろ
・頭の中に良い映像(イメージ)を描かせろ
・喜怒哀楽をだせ
・大きな声で話せ
・前のめりで聞いてもらえ
・うなずかせろ
・押してだめなら引いてみろ
・クロージングはシンプルに
・両極端の話しをしろ
・紙に書いて説明しろ
・たとえ話をしろ
・資料を使え
・細かい人には大雑把な交渉、大雑把な人には細かい交渉を
・のっている時にたくさん売れ
・お客様の立場で考えろ
・いろいろな角度から話せ
・勢いで売れ
・最後まであきらめない
・契約まで気を抜かない
・売ってる自分をイメージしろ
・表現力を磨け
・感動を与えろ

人間不信

不動産の営業というのはものすごく人間不信になる。実際私が辞めようと思ったのもそれが原因の一つだ。このままでは、普通の人間ではいられなくなる。とよく感じたものだ。要素としては以下の項目が挙げられる。

1.「けっこうです」と言う言葉を死ぬほど聞く。
2.お客様に嘘をつかれる。
3.上司に心を壊される。

一番こたえるのが2番だ。
例を挙げると、契約前にいとも簡単に断ってくる。申し込みのときは、すごいいい雰囲気で申込書を書いてもらい、もう他は目移りしないよとかいいつつも他で決めたから契約はできないと電話でさらりと断ってくる客がいる。まぁ他をつぶしきれていなかった営業マンの責任でもあるが、これはかなりびびる。

あと、引渡しの際に、双方合意のもとで契約をしたのに、想像していたものと違うからやっぱりやめたいなどといってくる客がいる。契約前にことこまかく説明をして、重要事項の説明までしたのにも関わらず、いざ引渡しが近づくと不安になるのか断り文句を無理やり見つけてそうやって辞めようとする。はいさよならで辞められればいいのだが、不動産の場合、民法上、手付け金を放棄しなければ契約を解除することができない。手付金は何百万だから、当然返せという話しになる。でも手付金は戻ってこないことを承知で契約してるんだからそうはいかない。実際この問題で裁判沙汰に何度もなりそうになった。つらいのは会社と客の間を取り持つ営業マンである。

こういった話は腐るほどあるので、またおいおい書いていきたいと思う。

とにかく何千万もするものを売る仕事はいろいろとトラブルも多いということだ。

中古マンションの値段の決め方について

ご自分でマンションをお持ちの方が、自分のマンションを売る時にどのようにして価格が決められているか気になると思います。

驚くほど簡単に決められているので、実情を知ると悲しくなります。

まず、対象物件の周辺で、同じくらいの条件(広さ、駅からの距離)のマンションがいくらで取引されたかを調べます。これを取引事例価格といいます。
この取引事例は、レインズという不動産機構に登録されているので、ネットで簡単に調べることができます。

例えば、広さも築年数も向きもほとんど同じような物件が2400万円で取引されていれば、その物件もそれくらいの価値であると判断できます。

いくら買ったときは5000万円していても、今は2400万くらいじゃないと、買うといってくれる人がいないので、金額としてはその辺で落ち着いてしまいます。

後は、付加価値として設備が多少いいということであれば、上乗せはしますが気持ち程度です。

絶対3000万じゃないと売らない!といっても、買う人がいないんじゃお話にならないですからね。長期戦に突入すると、段々築年数も古くなっていくので、余計条件が悪くなるだけです。

私もよく買い替えをしたいというお客さんの持ち家を、売ってあげた経験がありますが、相当簡単に価格を決めていました。
長期戦に持ち込むと、自分にとってもリスクなので、確実に売れる価格を提示しますし。。。なんせ仲介契約というのは成功報酬なので、2000万円で売った場合、3%+6万円をもらうだけです。その際に物件を告知する広告料なんかは全部その中に含まれています。なので、早く処理したいのです。(言い方は悪いですが)

悲しいかなこれが現実です。

バックヤードと上司

モデルルームでお客さんと商談している最中に、営業マンが何度もバックヤードに戻っていく姿を目撃したことはないだろうか。
あの行為は営業マンにとって非常に大切な行為なのである。

なにしに戻っているかというと、上司に状況を報告しに戻っているのである。
今お客さんがマンションを買うに当たって、問題となっている部分や、自分が話した内容などを上司にこと細かく報告する。それを聞いた上司が、次はこういう話をした方がいいとか、お客の問題点を報告から察知し、こういう資料を持っていき、説明しなさいなどといった的確な指示を出す。

僕の前いた会社の上司達は、とある大手マンションデベロッパーから引き抜かれてきた精鋭達ばかりなので、この指示が本当に的確で驚く。

自分が今まで、全然落とせなかったお客さんが、上司に報告し、言われたとおりの展開に持っていくと、お客さんの問題点があっさりと解決されることがよくあった。

そのため、営業マンにとって、バックヤードと上司は大切なポイントとなる。

当時私は思っていた。売れる営業マンに大切なのは、状況を的確に報告できる能力と、お客さんの不安点や問題点を交渉中に見抜く力だと。

その二つさえしっかりやっていれば、上司から的確な指示がくるので、そのとおりに実行すれば結構いいせんまでいくのだ。

操り人形みたいだけど、経験の無い若い営業マンは最初はこうやって経験をつまなければならない。絶対に経験のある人には勝てない。勝てるとしたら、その経験を短期間で奪うことである。一定期間これで積み重ね、自分のオリジナルをそれから生み出せばいいだけのことである。